◆【第91号】2025.1 キャリア採用者の定着と   メンタリング

 

メンター制度の導入するにあたり、新入社員・職員の離職防止と定着促進を目的としている企業・団体が多く見受けられますが、ここ最近、キャリア(中途)採用者に対しても同様の目的でメンター制度の導入を検討するというケースが増えてきております。

 

現在、様々な業種において人手不足が叫ばれる中で、各企業・団体では新卒採用者だけでなく即戦力となる人材を求めてキャリア採用にも力を入れています。それに伴い、「せっかく採用したキャリア採用者がすぐに離職してしまった」という声をよく耳にするようになりました。

 

キャリア採用者が抱える悩みは様々ありますが、パターンとして多く、かつ離職につながりやすいと思われるのが以下の3つです。

 

・社会人経験や実務経験があるがゆえに気軽に聞けない、相談できない。

・周りから支援が得られない

・自らの存在意義や価値についての悩み

 

今回は、上記のような悩みを抱えたキャリア採用者への支援として、メンタリングにどのような効果が期待できるかをお伝えいたします。なお、過去の記事においても、キャリア採用社員のメンタリングについて扱った記事がございますので、併せてご覧ください。(2024年2月発行 メンタリング・ニュース第83号『キャリア採用社員のメンタリングについて』

 

 

 

キャリア採用者は、既に前職でそれなりに経験がある、また一日も早く仕事で成果を出さなければといった気負いがあるがゆえに、「こんな初歩的なことを聞いたら周りに何と思われるか」といったことを過度に気にしてしまい周囲に相談が出来ない、辛くてもSOSが出せない、という人も多いのではないでしょうか。また、周囲も即戦力として見ているという面もあり、ともするとフォローやサポートがおろそかになりがちであるということも考えられます。

また、新卒社員と違い同期入社がいないという場合も多く、即現場配属の中でOJT等による先輩社員との業務上の情報伝達がメインの一方的なコミュニケーションばかりで、気軽に話せる仲間もおらず、ストレスや不満をため込んでしまう、というケースも多くみられます。

いくら経験があるとはいえ場所が変われば勝手も違います。気軽に何でも話せる、些細なことでも相談が出来るメンタリングの場や、メンターの存在があるだけで救われる、というのは想像に難くありません。

 

始めはメンターとの間で自由な対話を通じて徐々に信頼関係を構築していきますが、その関係が周囲に少しずつ波及していくことで、キャリア採用者がシッカリと職場に馴染んで定着してくことにつながっていきます。

 加えて、「郷に入っては郷に従え」という大前提がある上で、キャリア採用者が今までの経験やスキルを新しい職場で活かして貢献したいという気持ちをもっていることも多いです。そんな中で話に聞く耳を持ってもらえない、尊重してもらえないような扱いを受けると、自らの存在意義を感じられず、退職に至ってしまうということもあり得ます。

キャリア採用者を尊重し、その話に耳を傾けるフラットなコミュニケーションの場としても、メンタリングの機会を設けてみてはいかがでしょうか。キャリア採用者自身が、職場における自らの存在意義を確認する良い機会になります。もちろん、メンタリングを通じてキャリア採用者が新しい職場の雰囲気や仕事の進め方、既存のメンバーについて理解を深めることも大きな目的の一つです。

 

メンタリングを通じてお互いを尊重し合い、異なる経験、考え方や価値観を活かして新たな価値を創造することは、職場や組織全体の成長やモチベーションのアップつながる非常に有意義な取り組みであると考えられます。

 

キャリア採用者は年間を通じて入社してきます。新たなメンバーが早く職場に馴染み、定着するだけでなく生き生きと働くことが出来る職場は、お互いにフラットに向き合い、自由に 対話ができる風土の職場であるケースが多いようです。そういった職場はキャリア採用者だけでなくすべての人にとっても働きやすく、得難い職場なのではないでしょうか。