今回は、メンターとしての体験やメンタリングのスキルが、マネジメントやリーダーシップに、「どう活きるか」および「その運用ポイント」について解説します。そこで、リーダーシップを取るべき社員とマネジメントをする立場の社員とで分けて解説します。また、リーダー・マネージャーの育成の対象が、メンターとメンティーとでは違いますので、それも分けて説明します。
まずは、マネジメントの考え方ですが、日本メンター協会では、マネジメントの研修をする際に、それを「メンバーに仕事をしてもらうこと」とシンプルに説明しています。そのうえで、以下の図にあるように、「人に対するマネジメント」と「仕事に対するマネジメント」として、2つに分けて考えるようにしています。メンターとして学べるのは、「人に対するマネジメント」の方になります。
メンティーと「何でも話し合える」ような素晴らしいメンタリングができていれば、職場でも、自然と、メンバーのモチベーションが上がるようなコミュニケーションが取れるようになります。職場でも、メンバーからの意見を受け容れることができますし、メンバーの気持ちも、態度・様子からくみ取れるようになります。また、自分からも、仕事の指示だけではなく、それにまつわる自分の思いや気持ちも、素直にメンバーに伝えることができます。それは、メンバーにとっても、職務指示の内容や方向性がよく理解できますし、マネージャーの立場や状況もくみ取ることができます。
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マネジメントの考え方
「メンバーに仕事をしてもらうこと」
1. 人に対するマネジメント
・メンバーのモチベーションを上げる
・メンバーを育てる
2. 仕事に対するマネジメント
・課題・問題を見出す
・仕事を整理して、それをメンバーに分担し実行させる
・スケジュールおよび成果を管理する
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メンバーの仕事へのモチベーションは、何といっても、「仕事にやりがいを感じてもらうこと」です。「第7回 新入社員の定着」でも述べましたが、仕事へのやりがいのポイントは、「興味」「評価」「成長」の3つです。マネージャーは、仕事を通して「仕事に対する興味を伝える」「成果をほめてあげる」「成長しているところを伝える」この3点を、メンタリングと同様に、折に触れて、メンバーに伝える態度が大切です。この3つが、メンバーに仕事にやりがい持たせ、モチベーションアップにつながります。
「女性社員のなかで、ロールモデルになるようなメンターがいない!」という相談をよく受けます。まず、ここで、確認しておきたいことは、日本メンター協会の捉えているメンターは、「模範的な目指すべきモデルではない!」ということです。いい意味でも、そうでない意味でも、“参考”にすることはあっても、目指す対象ではないということです。
もちろん、メンタリングを進めていく中途で、メンティーが目指したいという気持ちは否定するものではありません。ですから、女性活躍推進におけるメンター制度のメンターは、女性であるべきと決めつける必要はありません。もちろん、女性メンターから、同性ならではの意見も出てくるでしょう。「同性ならではの質問や意見を聞きたい」という要望には、男性メンターから、参考になる女性を紹介してもらえればいいのです。その者から、参考意見を女性メンターに話してもらっても、一向に構わないのです。むしろ、お互いに知人を紹介し合える関係を、メンタリングでつくることの方が大切なのです。
育成面では、育成に大切なフィードバックのスキルが身に付きます。フィードバックは、「アドバイスを与える」というよりは、自分がメンバーに対して、「感じたこと、思ったことを素直に伝えること」です。そうして、相手は自分の行動を見直し、学びや成長につなげます。よいメンタリングは、そのようなフィードバックが、自然と繰り返されていたと思います。メンタリングで培ったフィードバック・スキルを職場でも実践すれば、メンバーは、自らの力で成長するようになります。
リーダーの定義は、いろいろと考えられますが、日本メンター協会では、「その時その場に応じて、メンバーに対し良い影響を与える言動ができる人」としています。メンタリングを通して、身に付くリーダーシップの一つは、「職場のコミュニケーションを活性化させるような影響を与えること」です。これは、職場において、大切なリーダーシップです。メンバー同士の情報共有が密になり、職場が明るくなります。以下の図にあるような態度や姿勢、心構えを「メンタリング・スタンス」と呼んでいます。それは、メンタリングを通して、自然と身に付いてくるものです。そのスタンスを職場のなかで実行してください。そうすると、各メンバーから、マネージャーや他のメンバーへ話し掛けやすい雰囲気が生まれます。
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リーダーとして職場で発揮したい
メンタリング・スタンス(態度・姿勢・心構え)
1. 常に、笑顔で元気よく、メンバー全員にあいさつをする。
2. 相手の話を最後まで、共感をもって聴くようにする
3. 素直な態度で、気持ちを交えて話すようにする
4. こちらから声を掛け、公私を交えた話をする。
5. 常日頃、いつでも相談に来るよう呼びかける
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※人材開発情報誌「企業と人材」2019年12月号に掲載されました。