メンタリングのテーマ

 

 本来、メンタリングは、何を話してもいい場です。ですから、メンタリングのテーマをあらかじめ決めてから始めるということは、本来のあり方ではないと言えます。自然発生的に行われるメンタリングであれば、特に意識しなくても意味のある話し合いができるでしょう。しかし、特に、メンター制度におけるメンタリングでは、「何を話したらいいのかわからない!」という質問が多いのも事実です。

 ここでは、あえて、メンタリングでのテーマについて解説します。

 

①「今、悩んでいること」~現在

職場や家庭問わずに、「仕事が覚えられない。」「コミュニケーションが取りにくい人がいる。」「家庭内のトラブル」など、真剣に悩んでいることが、第一に挙げられます。職場では、プライベートのことは話しにくいテーマだと思いますが、特に、未成熟なメンティーに対しては、生活全般の助言は必要です。これは、国内企業のメンタリングの特徴的なテーマでもあります。

 

 

 

 

② 「将来について」~未来

キャリア形成と置き換えてもいいと思います。職場の仕事のレベルアップにと留まらず、どのような仕事をしたいのか、どのような人間になりたいのかなど、一企業の枠を越えることまで及びます。人事担当者にとっては、将来について考えることは、離職につながりかねないと心配される向きもあると思いますが、メタリングにとっては、避けることのできないテーマです。むしろ、避けることは、若年社員の支持を失い、結果的に組織を離れることになりかねません。

 

 

③ 「経験したこと」~過去

メンティーにとってメンターの体験談は、公私を問わず、大変参考になります。一方、メンターにとっても、メンティーの体験談は、新たな考えを知る良い機会となります。

また、体験したことを共有することは、パートナーに対して関心が高まり、信頼関係が築かれていきます。加えて、自分自身にとっても、自分がどのような人間かを再認識できるという意味でも大変意義のあることです。

 

 

 

 メンタリングに臨む基本は、まず「今の自分の気持ち」を確認することです。今の自分は、「どういう気持ちなのか?」「何かにとらわれていないか?」「気持ちから目を背けていないか?」など、自分の気持ちに向き合うことから始めます。そこから、将来のことや、今の課題などについて展開していくと、“本当の自分”についてのメンタリングになります。それは、メンターもメンティーも関係ありません。

 

 しかし、自分のことを素直にふりかえり、話すことは、それほど簡単なことではありません。メンターもメンタリングに慣れていないうちは、教材を活用したり、研修でトレーニングしたりしてから、メンタリングを始めることをお勧めします。

 

 

 

【“キャリア” がメインテーマ】

 

 あえて、メンタリングでのテーマを、敢えて一つあげるとすれば、それは、“キャリア”です。日本メンター協会では、“キャリア”を自由に話し合えることが、メンタリングでの最終目標の一つと考えています。もちろん、その前提として、今の自分を率直に受け容れて、お互いに、一人の人間として向き合い、自由に話し合える関係が必要です。

 

 それでは、いったい、そのキャリアをどう考えたらいいのでしょうか?メンタリングの意義を考えるうえで、“キャリア”の考え方を4つに分けて整理してみましょう。

 

① 組織内のキャリアステップ

大きな組織であれば、組織内のキャリアパスの仕組みを用意していることでしょう。能力に応じて、面談や試験・研修などを組み合わせ、そのステップを制度化した職能資格制度が、その代表例です。「ゼネラリストを目指すのか、スペシャリストを目指すのか」「正規社員を選択するか、地域限定社員として働くのか」など、様々なコースを用意して、各社員がキャリアパスを選択できるようにしている組織も多くなってきました。これらは、組織内におけるキャリア形成を第一にした考え方です。

 

 

 

② 組織内外に関わらないキャリア形成

 現在、多くの若い社会人は、ある企業に限定してキャリアを積むことに違和感を持つ人も少なくないと思います。今や、大企業でも、終身雇用制を維持することは難しくなってきていますから、当然の成り行きでもあります。極端な話、入社した時から、自分のキャリア形成に合った組織なのかを判断して、それがかなわないのであれば、転職に迷いわないという人も多いでしょう。社外セミナーなどを活用して自己啓発に投資する社会人は、今や普通になってきています。組織内外に関係なく、キャリアを形成するという考え方が一般的になりつつあります。

 

 

③ “働くこと”すべてがキャリア

これまでは、キャリアといえば、組織における職業人に一般的に使われていた言葉だったように思います。以前に比べ、インターネットの普及から、フリーランスとしての活動はしやすくなりました。また、副業を認める企業も多くなってきました。一企業における仕事だけをキャリアと指すのは、もはや、一般的でなくなってきています。兼業農家は、以前からダブルワークと言えますし、育児や介護など、いわゆる家事は仕事ではないのでしょうか?これからは、時間や場所に関係なく、”働くこと”すべてをキャリアと考えるようになってきています。

 

 

④ キャリアとは、“生き方”

働く女性が当たり前になり、家庭と職場の境が曖昧になりつつあります。また、それに加えて、テレワークも多くなり、ますます、家庭の時間と仕事の時間が共存するようになってきました。企業内の活動だけが”働くこと”ではなく、家庭でのことや地域活動はもちろん、趣味的な活動も収益に直結し、それを職業にすることも多くなっています。もはや、キャリアを職場以外の時間と切り離すことは難しくなっています。「自分の人生そのものをどう送っていくか」という観点で、キャリアを捉えることが必要です。生き方を考えることこそが、キャリアデザインであり、キャリア形成なのです。

 

 「キャリアとは、“生き方”」と考えれば、メンタリングのメインテーマは、キャリアと考えていいと思います。女性活躍推進が目的のメンター制度は、もともと、職場と家庭の関係をどう考え、どう実践していったら、やりやすいのかという視点が大きかったと思います。それは、もはや、女性だけの視点ではなく、すべての社会人の視点であるべきです。多くの組織では、「女性活躍推進室」の名称が「ダイバシティ―推進室」に変わってきています。各々の生き方は、千差万別であり、そのすべてを尊重し、お互いにいい影響を受け合い、考え方の幅を広げていくというのがダイバシティの考え方です。メンティーが10人いれば、10人のロールモデルが必要です。言い換えれば、自分にぴったりと合ったロールモデルは存在せず、それぞれのメンターの考え方、生き方を参考にすればよいと考えるべきでしょう。

 


 

【日本メンター協会】

            

Tel 03-6264-1191            

Mailm-jimukyoku@mentor-kyoukai.jp

 

 

 



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