メンターのイメージは、それぞれ、人によって、組織によって違うと思われます。訳語としては、「支援者」「助言者」とされることが多いです。 メンターに特定なスキルや知識を求めるのであれば、その領域に知識・スキルを持ち、その実績があり、いろいろと経験している人をイメージするかもしれません。しかし、多くの人のイメージは、「いろいろなことを安心して相談できて、前向きな気持ちにさせてくれる人」というイメージでないでしょうか。
以下に、メンターのイメージを具体的に、6つ挙げてみます。
① 仕事の面でも、プライベートの面でも安心して相談できる人。
② どのような相談でも、共に悩み、考え、支え、称えてくれる人。
③ できる範囲で、有形無形問わず、力になってくれる人。
④ 特別に振る舞うことはせず、ありのままの態度で接してくれる人。
⑤ 同じ目線で、フラット(対等)な立場で対話してくれる人。
⑥ メンティーと共に、成長する人
※ メンターに支援してもらう立場の人を、メンティー(プロテジェ)と呼びます。
メンターは自分を成長させるいい機会
本来は、メンターが自認・自称するものではなく、メンティーがその人に対し思うものです。メンティーの成長を促進するだけではなく、メンティーと共に、自らも成長する関係と言えます。メンティーとの対話(メンタリング)などを通して、自らを省みたり、メンティーの意見に触れたりして、得るものはとても大きいものです。メンターになるということは、自分の成長にも寄与することになるのです。
メンターは普通の人でよい
組織におけるメンター制度では、往々にして、メンターというと、指導者・支援者と捉え、教えたり、リードしたりしなければならないと思われがちです。しかし、求められているものは、その人のありのままの経験や知識・スキルです。また、メンティーの話しに対する素直な気持ちや思い・考えなどです。ですから、支援者・指導者というよりは、“今の自分”でいいですし、特別な人ではなく、“普通の人”でいいのです。
メンター制度で、メンターを選定する場合は、「社員定着促進」「女性活躍推進」「マネージャーの育成」など、制度の目的を適うよう、選定することが前提になります。以下のようにメンターを2つの類型に分けて考えるとよいでしょう。
同年代、学歴・職歴の共通性、同性など、比較的価値観が似ていると思われるメンターです。比較的、コミュニケーションが取りやすく、メンタリングを通じて、職場や仕事への適応を目的とする場合は、相応しいと考えられます。
世代が離れている、学歴・職歴が違う、異性など、比較的価値観が異なると思われるメンターです。異なる考え方・見方を互いに学び合えるメンタリングにつながります。また、メンティーにない見識・知識・技術などを持ち合わせている場合も、こちらの類型に入るでしょう。
いずれにしてもメンタリングの良し悪しは、メンターのコミュニケーションの取り方の上手さに左右されます。メンター制度を導入する場合は、コミュニケーションスキルの基準で、メンターを選定するべきでしょう。ただ、どうしても、コミュニケーションの取り方が個性的すぎたり、思い違いしているケースも見受けられます。メンターに対する教育を施すことは、必要不可欠と考えた方がよいでしょう。
「他のスキルとメンターとの違いは?」とよく質問を受けます。よく引き合いに出されるのは、コーチングやエルダー、OJTなどです。また、「上司ではダメなのか?」「違う部署のメンターがよいのか?」なども話に出ます。
日本メンター協会としては、「あまりこだわる必要はありません。」と答えます。
以下のことを理解していただければよいと思います。
「メンターは、上司ではダメ。」という話をよく聴きますが、それは正確とは言えません。部下上司の関係では、職務指示や業績考課などの場で、一方的な伝達が主であったりします。そのように自由に会話ができなかったりする状況では、メンターとメンティーの関係になりにくいということなのです。ですから、そのような状況以外の場では、メンターとメンティーの関係がつくれるかもしれませんし、お互いに強い信頼関係があれば、どのような場面でもメンターであり得るのです。
また、メンター制度のコンサルティングにおいては、制度の目的に応じて、独自の「メンターの定義」をしても一向に構わないと指導しています。場合によっては、呼名もメンター以外に変えることさえあります。
「メンターのスキルを教えてください。」という研修依頼をよく受けます。日本メンター協会でも、年間、相当数の研修を実施いたしますが、一般にイメージしているスキルというよりは、姿勢・態度・心構えといった“スタンス”と呼んだ方が近いかも知れません。そのためには、2人で「何でも話し合える」ような、普通で自然なコミュニケーションができるような研修をします。
研修では、傾聴的な項目を取り入れることは多いです。コーチングスキルやOJTスキルなども、その組織でのメンター制度の目的に沿うようであれば取り入れますし、メンタリングのスタンスと違う部分が必要であれば、メンタリングの考え方と区分けして指導するようにしています。
なお、他のコミュニケーションスキルとの関係を別ページで解説していますので、そちらを参考にしてください。
※メンタリングスキルについての詳細こちら→
コーチングにしても、マネジメントにしても、それを効果的にするポイントとしては、相手との「信頼関係が大切」と、よく言われます。メンターにおいても、メンティーとの信頼関係が一番重要です。日本メンター協会では、その信頼関係を「何でも話せる関係」と定義しています。メンターに気を使って話す内容を決めてしまっていては、それは、メンタリングとは言えません。
また、メンタリングスキルを「信頼関係をつくるコミュニケーションスキル」としています。日本メンター協会は、そのような信頼関係をつくることを目的とした教材を監修しました。スキルを身に付けるというよりは、メンターとメンティーとの「コミュニケーションワーク」、「自由な話し合い」、「感謝の言葉の交換」を通して「何でも話し合える関係」に導くような構成になっています。
メンター制度の目的の一つとして、メンターの成長、具体的には、「組織のリーダーとして育成したい」、「マネジメントスキルを高めてもらいたい」等の声をよく聞きます。それでは、メンター経験が、リーダーとして、マネージャーとして、「どのようなプラスがあるのか?」について解説します。その前に、マネジメントスキルについて、簡単に説明します。
マネジメントには、大きく2つの側面があります。それは、仕事の側面と人間的側面です。マネジメントの定義を、シンプルに言えば、「メンバーに仕事をやってもらうこと」です。マネジメントを仕事面で言えば、メンバー一人ひとりに、仕事を効率的に分担し、目的にかなうよう、時間面、コスト面などの尺度から、効果的に管理することです。
しかし、いくら、効率的に仕事を分担したとしても、メンバーのモチベーションが低ければ、その仕事に意欲的に取り組んでくれないでしょう。もう一つの側面は、人間的側面です。メンバーのモチベーションにも気を配り、モチベーションの維持・向上を図ることが、もう一つのマネジメントスキルです。
メンター経験で身に付くマネジメントスキルの多くは、自由な対話(メンタリング)から生まれます。仕事の相談があった時などは、技術的なことは、もちろん、日常の指導に比べ、その背景、周辺知識などをより多く話す機会になります。メンターとして、メンタリングを重ねていくと、仕事の教え方が自然と幅広くなります。また、メンバーの業務の状況や心情なども理解でき、仕事の指示の仕方も上手になります。メンター経験は、仕事面でのマネジメントスキル上達に寄与するのです。
メンターとして、メンタリングの基本的姿勢は、傾聴(相手に寄り添い聴くこと)です。その姿勢は、メンバーのモチベーションを上げるようなコミュニケーションには、なくてはならないものです。それは、人間的側面のマネジメントスキルでもベースとなるものです。このように、メンター経験は、仕事面、人間的側面、双方のマネジメントスキルを育んでくれます。
ホメロスの叙事詩『オデッセイア』に登場する賢人“メントル”が語源です。オデュッセイア王の息子テレマコスの教育を託され、立派な人物に育てたとされています。
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